極子日子

つぶやくように書いて書けるようにするための雑記

なりきり

NHKバクマンで蠟人形師を取材していた。スーパーリアルの手法でコピー人間のような蠟人形が作られる。生きているような人形、モデルとなった人間、たとえば、坂本龍馬太宰治、オバマ大統領、画家のピカソ、寅さんこと渥美清の顔かたちをそのまま写し取ったような人形だ。

作り方は、まず彫刻の手法で立体像を粘土などで形作り、石膏と樹脂材で覆って鋳型を作る。その型に200度に熱した蝋を注ぎ込む。一晩冷やして型を外すと蝋で出来た基体できるので、そこに肌のしわを彫り込み、爪や血管は彫り込んだ溝に赤や青の蝋を溶かし込み、また肌色の蝋を上塗りして作る。髪の毛は1本1本埋め込む。太宰治で3万本程度だという。

蠟人形師の松崎覚氏は、たとえば太宰治像ならばその書いたものを熱心に読み、その人が憑依するようにするのだという。有名な写真の像は机に向かっているところだが、座り姿で正座、その背中は丸い。写真から何から総動員して想像した結果なのだという。

1体作るのに半年かかるそうだ。しわを彫り込んだり、爪や血管や目玉や髪の毛やまつげ、眉毛にいたるまでの造形を作り出すのは根気のいる作業だ。

服の中に肌が隠れているモデルで1体300万円。

 

文章を書くことも同じような作業だろう。色々な情報を吸収し、そのもののコピーを基体として型出しし、そこに想像で造形を加えていく。