極子日子

つぶやくように書いて書けるようにするための雑記

我が師の恩

今日から師走、恩師の思い出は?が今日のお題。

先日NHKで女子プロボクシングの日本代表となったお笑い芸人のしずちゃんこと山崎静代選手とボクシングの師・梅津正彦トレーナーのドキュメンタリーを見た。梅津さんは今年の夏、癌のため、44歳の若さで亡くなった。

しずちゃんはドラマでボクサーを目指す役を演じるため、梅津トレーナーの手ほどきを受けた。女子スポーツの世界では熱血コーチの特訓を受けて素質を伸ばして行く女子選手の話は多い。しずちゃんが出会った梅津さんもまさに熱血コーチだった。

梅津さんは癌が進行して黄疸が出るようになり、痩せこけてもトレーナーの仕事を続けていた。しずちゃんを指導しながら、また別のドラマ現場の格闘シーンの指導をしていた。とんでもない情熱の持ち主だ。

しずちゃんは日本代表に選ばれながら、過呼吸のため外国選手との試合で勝てず、目指していたロンドンオリンピックの出場を逃す。それでもいまは4年後のリオオリンピックを目指している。それも梅津トレーナーの指導のたまものだ。梅津さんは夢は絶対に叶うから絶対に諦めるな、という強い言葉でしずちゃんを叱咤激励し続けた。

お前を信じているから頑張れと言い、自分に注目してくれる師がいるのは心強いと思う。さらに一歩一歩、しずちゃんが歩み出す足に、そこは違う、もっとこうしろ、と隅々まで指導が入る。しずちゃんは梅津さんがいたから20代の後半でボクシングをはじめたズブの素人でありながら、日本代表にまでなった。

そういう意味での師に私は恵まれては来なかったと思う。人格者の教授には幾人もであった来ただろうが、私を信頼し、注目してくれる人などはいなかった。あきらめるから出来ないんだ、お前にはできる、と言ってくれる人はいなかった。

梅津さんが立派な人格者である必要はなかった。しずちゃんに思い入れる信念がしずちゃんを育てた。そういう師に今からでも出会いたいと思う。

またいつもの昔話に戻るなら、恋という感情を教えてくれた教師はいた。 自分ひとりが特別に選ばれて、自分の内面にその人の言葉が親しいものとして入り込んでくるという経験をさせてくれた。ただ恋という以心伝心はあってもその教師に周囲の状況を勘案する心、先生として相手の能力や進路をさし示す使命感があったかどうか。

梅津トレーナーには、高尚な先生とは違う、一見短絡的で図々しい敷居の低さがあったようで、好ましい兄貴分だったと思う。